ファクタリングの仕組みとメリット・デメリットを徹底解説【図解付き】
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金を専門業者に売却することで、短期間で資金を調達できる方法を指します。
取引には一定の手数料が発生するものの、支払い期日を待たずに現金を手にすることが可能です。
この記事では、図解を活用してファクタリングの基本的な仕組みを明らかにし、メリット・デメリット、手数料の相場、資金が入金されるまでの期間、また利用時に注意すべき点を詳しく解説します。
ファクタリングの概要
ファクタリングを導入することで、企業は資金繰りをスムーズにする手段を得ることができ、期日を待つことなく現金化が可能となります。このため、資金調達方法の一つとして幅広く活用されています。
ファクタリングの基本的な定義
ファクタリングとは、事業者が未回収の売掛金をファクタリング業者に売却し、現金を前払いで受け取る仕組みです。
この方法を利用することで、企業は現金化の遅延リスクを減らし、即時に資金を確保することができます。
一般的な商取引では、売掛金の支払いが完了するまでに30日から60日を要します。その間、資金不足が発生するケースも少なくありません。
このような状況でファクタリングを活用することで、売掛債権を迅速に現金化し、事業資金の不足を解消することが可能です。
売掛債権とは、商品やサービスを提供した際に発生する、取引先からの支払いを受け取る権利のことを指します。
経済産業省が推奨する資金調達方法
違法業者の存在が問題視される一方で、ファクタリングは経済産業省が認める適法な資金調達方法の一つです。
以前は、「債権譲渡禁止特約」の存在が原因で普及が妨げられる場面も多くありましたが、2020年の民法改正によりこの制約が緩和され、債権譲渡が容易になりました。
この法改正により、ファクタリングの活用がさらに広がることが期待されています。
【図解】ファクタリングの種類と仕組み
ファクタリングには大きく分けて「買取型」と「保証型」の2種類が存在します。多くのファクタリング業者が採用しているのは「買取型」であり、その中でも「2者間契約」または「3者間契約」の形態が取られます。
買取型と保証型の特徴
以下の表に、買取型と保証型の主要な違いを示します。
| 買取型 | 保証型 |
利用目的 | 売掛金の現金化 | 未回収リスクの軽減 |
費用 | 手数料 | 保証料 |
入金タイミング | 契約締結後、最短即日 | 未回収時に入金 |
買取型は直接的な資金調達に向いており、資金をすぐに得られる一方、保証型は売掛金が未回収となった際に備えるための仕組みとして利用されます。
2者間ファクタリングの特徴
2者間ファクタリングは、利用者である企業とファクタリング会社が直接契約を結ぶ形式です。
この仕組みでは、売掛先が取引に関与することなく、迅速に資金調達を行うことが可能です。
以下のような流れで進行します。
【ここに画像を挿入】
- 商品やサービスの提供後に売掛金が発生。
- ファクタリング会社に申込みを行い、審査と契約を締結。その後、ファクタリング会社から売掛金の代金が支払われる。
- 売掛先から入金を受けた後に、依頼者がファクタリング会社に代金を返済。
2者間ファクタリングでは、取引先にファクタリングの利用を知らせる必要がないため、取引先との関係を維持しやすいという利点があります。しかし、ファクタリング会社は売掛金の存在を直接確認する手段を持たないため、リスクを補填するために手数料が高めに設定されることが一般的です。
3者間ファクタリングの特徴
3者間ファクタリングは、「利用者(企業)」「売掛先」「ファクタリング会社」の三者が関与する契約形態です。
この形式では、売掛先に売掛金の譲渡が通知され、承諾を得た上で契約が成立します。
手続きの流れは次の通りです:
【ここに画像を挿入】
- 商品やサービスの提供後に売掛金が発生。
- 売掛先に対して、売掛金譲渡の通知を行い、承諾を得る。
- ファクタリング会社と契約を締結し、売掛金の代金を受け取る。
- 売掛先が支払期日に直接ファクタリング会社へ支払いを行う。
この形式では、売掛先からの承諾が必要となるため、契約が成立するまでに時間がかかることがあります。その一方で、売掛金の実在を確認できるため、ファクタリング会社にとってリスクが低く、2者間ファクタリングに比べて手数料が抑えられる傾向があります。
手数料を節約したい場合や、売掛先との関係が良好であれば、3者間ファクタリングを検討する価値があります。
ファクタリングの利用時に注意すべき点
ファクタリングを活用して資金調達を行う際は、利用形態による違いを理解し、それぞれの仕組みが企業に与える影響を把握することが重要です。
2者間ファクタリングでは、売掛金の回収後にファクタリング会社への返済を行う必要があります。一方、3者間ファクタリングでは、売掛先が直接ファクタリング会社に支払いを行うため、企業の手間を軽減することができます。
ファクタリングの4つの主要なメリット
ファクタリングを活用することによる代表的な利点は以下の通りです:
- 最短即日で資金を調達できる
- 売掛先が倒産しても返済義務がない
- 信用情報への影響がない
- 赤字や税金の滞納があっても利用可能
1. 最短即日での資金化
ファクタリングの大きな利点は、申し込みから最短で即日資金調達が可能である点です。
銀行融資では審査や手続きに数週間から数ヶ月を要するのに対し、ファクタリングは数時間から1日で現金化できるため、急な資金需要に迅速に対応できます。
2. 売掛先が倒産しても安心
ファクタリングでは、通常、売掛先が倒産した場合でも利用者に返済義務が発生しません。
これにより、売掛金の未回収リスクを大幅に軽減し、企業はより安心して資金繰りを進めることができます。
3. 信用情報への影響がない
ファクタリングは融資ではなく、売掛金の売却であるため、利用者の信用情報に記録されることはありません。そのため、企業の信用力を損なうことなく資金調達が可能です。
4. 信用力に左右されない利用可能性
ファクタリングでは、申請者自身の信用力よりも、売掛先の信用力が重要視されます。そのため、赤字決算の企業や税金の滞納がある場合でも利用可能であり、多くの事業者にとって柔軟な資金調達手段となっています。
ファクタリングの主なデメリットと留意点
ファクタリングには多くの利点がある一方で、いくつかの課題や注意すべき点も存在します。ここでは、主なデメリットを以下にまとめて解説します。
- 手数料が発生する
- 3者間ファクタリングでは売掛先の同意が必要
- 債権譲渡登記が必要な場合がある
- 売掛金の範囲内でのみ資金調達可能
①手数料が発生する
ファクタリングを利用する際には、サービスの対価として一定の手数料が発生します。
特に2者間ファクタリングでは、ファクタリング会社が抱えるリスクが高いため、手数料が高めに設定されることが一般的です。ただし、資金繰りの急場をしのぐためには大いに役立つ手段であり、状況に応じた活用が求められます。
②売掛先の同意が必要
3者間ファクタリングでは、売掛先企業に対して債権譲渡の承諾を得る必要があります。
このプロセスが理由で、売掛先に資金繰りの問題があるのではないかという懸念を持たれる可能性があり、取引関係に影響を及ぼすリスクも伴います。
③債権譲渡登記が求められる場合がある
ファクタリングの際に、債権譲渡登記が必要となるケースがあります。この登記手続きにより、売掛金の所有権移転が公式に示され、第三者がこれを確認できるようになります。しかし、数万円の費用がかかることや、取引内容が公開されることでプライバシー上の懸念が生じる場合があります。
④資金調達額が売掛金の範囲内に限定される
ファクタリングによる資金調達は、売掛金の額を超えることはありません。
そのため、より多額の資金を調達する必要がある場合には、銀行融資や他の手段と併用する必要があります。また、売掛金が存在しない場合にはファクタリング自体が利用できないため、事前に現状を十分に把握しておくことが大切です。
ファクタリングの手数料の概要
ファクタリングの手数料率は、契約形態やリスクの度合いによって異なります。以下に、一般的な手数料の目安を示します。
- 2者間ファクタリング:8%〜18%
- 3者間ファクタリング:2%〜9%
手数料は、売掛金の回収リスクや債権の確認可能性に基づいて設定されます。特に2者間ファクタリングでは、以下のようなリスクが伴うため、手数料が高くなる傾向にあります。
- 売掛金が回収できないリスク
- 売掛金そのものが存在しないリスク
- 利用者が売掛金を別の支払いに流用するリスク
これらのリスクを回避するため、信頼性の高いファクタリング会社を選ぶことが重要です。
資金が手元に届くまでの時間
ファクタリングを利用してから資金が振り込まれるまでの期間は、契約形態や手続きの進行速度によって異なります。
2者間ファクタリングの場合
2者間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社のみで契約が成立するため、手続きが非常に迅速です。
多くのケースでは、申込みから数時間以内に審査が完了し、最短で当日中に資金を受け取ることが可能です。
3者間ファクタリングの場合
3者間ファクタリングでは、売掛先からの承諾を得るプロセスが含まれるため、手続きに時間がかかる場合があります。
通常、契約完了までに数日から2週間程度を要することがあります。
ファクタリング利用の流れと必要書類
ファクタリングを利用する際には、いくつかのステップを踏む必要があります。また、審査を通過するためには、指定された書類を用意することが求められます。以下にその手順と必要書類について詳しく解説します。
①申込みの方法
ファクタリングの申し込みは、電話やWebフォームなどを通じて簡単に行えます。
申し込み後、ファクタリング会社の担当者から連絡が入り、詳細な手続きが始まります。
②審査と必要書類の準備
審査では、以下の書類を提出する必要があります。これらは審査プロセスをスムーズに進めるための重要な資料です:
- 通帳のコピー(表紙を含む、直近3ヶ月分)
- 売掛金に関連する書類(請求書や契約書など)
提出後、最短30分から60分で審査結果が通知されるケースもあり、非常に迅速な対応が特徴です。
③契約締結
審査結果に納得した場合、正式な契約を結びます。
契約書にはすべての条項が記載されているため、内容を十分に確認し、理解した上で署名を行うことが重要です。疑問点がある場合は、必ず担当者に確認しましょう。
④資金の入金
契約が指定時間までに完了した場合、多くのファクタリング会社は当日中に資金を振り込むことが可能です。
特に2者間ファクタリングでは、手続きが完了してから数時間以内に資金が振り込まれるケースも珍しくありません。
ファクタリング会社の選び方:注意すべき8つのポイント
ファクタリング会社を選ぶ際には、慎重な判断が求められます。悪徳業者を避け、信頼性の高い企業を選ぶために、以下のポイントを参考にしてください。
1. 希望条件の確認
利用を検討しているファクタリング会社が、自社の要望を満たしているかを確認することが重要です。以下の条件を事前にチェックしましょう:
- 売掛金の全額買取が可能か
- 個人事業主でも利用できるか
- 希望する契約形態(2者間または3者間)に対応しているか
特に、即日資金調達が必要な場合や高額な資金調達を希望する場合には、それに対応できるファクタリング会社を選ぶ必要があります。
2. 手数料の妥当性
手数料は、ファクタリングを利用する際の重要な判断材料です。一般的な相場は以下の通りです:
- 2者間ファクタリング:8%〜18%
- 3者間ファクタリング:2%〜9%
相場を大きく上回る手数料や、逆に極端に低い手数料を提示する会社は、悪徳業者である可能性が高いため注意が必要です。
3. ホームページの信頼性
ファクタリング会社の信頼性を判断する際、公式ホームページの内容が非常に重要です。
会社概要や所在地、連絡先が明記されているか、また内容が正確であるかを確認しましょう。これらの情報が曖昧な場合、その会社の利用は避けるべきです。
4. 担当者の対応
契約前に担当者とやり取りする際、その態度や説明の明確さを確認してください。
説明が不明瞭であったり、不安を感じる対応を受けた場合は、その会社との契約を再検討するべきです。
5. 償還請求権の有無
ファクタリング契約には、通常「償還請求権なし」の条件が含まれています。
この条件が守られていない場合や、「償還請求権あり」と明記されている場合は、悪徳業者である可能性があるため契約を避けましょう。
6. 契約書の内容
契約書は、すべての条件が詳細に記載されている重要な文書です。
内容を十分に確認し、不明点があれば契約前に必ず解消してください。また、納得できない条項が含まれている場合は、無理に契約しないことが重要です。
7. 契約書の部数
通常、契約書は双方が1部ずつ保有するため、合計2部作成されます。
その場でコピーを行い、双方で確認することで、後のトラブルを防ぐことができます。
8. 悪徳業者の特徴を把握
悪徳業者を避けるためには、以下のような特徴に注意してください:
- 契約内容が曖昧で不透明
- 極端に高額な手数料を請求
- 受け取れる資金が売掛金に対して著しく低い
このような兆候が見られる場合、その業者との取引は避けるべきです。
ファクタリングの違法性と合法性に関する解説
ファクタリングの利用が増加する中で、一部の違法業者が問題を引き起こし、社会問題として取り上げられることがあります。ここでは、ファクタリングの合法性と、違法となるケースについて詳しく説明します。
ファクタリングの合法性
ファクタリングそのものは、法的に認められた資金調達手段の一つであり、適切に行われれば合法です。この取引は以下の法律に基づいています:
- 民法第555条(売買契約)
- 民法第466条(債権の譲渡性)
- 民法第467条(債権譲渡の対抗要件)
これらの法律により、債権譲渡として扱われるファクタリングは、貸金業とは異なるため、貸金業登録を必要としません。ただし、債権譲渡を装った金銭貸付は違法とされるため、業者選びには十分な注意が必要です。
給料ファクタリングの違法性
給料ファクタリングは、給与の受け取り権をファクタリング業者に譲渡し、給料日前に現金を手にするサービスです。しかし、この形態は実質的に貸金業とみなされる場合が多く、無登録で提供される場合は違法とされます。
近年、給料ファクタリングを行う業者が摘発されるケースが増えており、以下の問題が指摘されています:
- 法外な手数料が課される
- 契約内容が不透明でトラブルに発展しやすい
このようなサービスは利用を避けるべきです。
ファクタリングに関するよくある質問
ファクタリングを検討する際、多くの人が抱える疑問について、ここで具体的に回答します。これらの情報を参考に、不安や疑問を解消してください。
ファクタリングには税金がかかるのか?
基本的に、ファクタリングは「売掛債権の売却」として扱われ、消費税は課されません。国税庁でも、ファクタリング取引は非課税と認識されています。
ただし、一部の状況では消費税が発生する場合があります。例えば、債権譲渡登記の手続きにかかる費用には消費税が含まれることがあります。
契約時には、手数料に消費税が加算されていないか確認することが大切です。
ファクタリングの審査は簡単に通るのか?
ファクタリングには審査があり、必ずしもすべての申請者が通過するわけではありません。審査の基準として特に重要視されるのは、売掛先企業の信用力です。
ファクタリング会社によって審査基準は異なりますが、事前に必要な情報や書類を準備することで、審査通過の可能性を高めることができます。
ファクタリングに金利はかかるのか?
ファクタリングは売掛債権の売買契約であるため、金利は発生しません。ただし、手数料が課されます。この手数料は、売掛金の早期現金化やリスクの補填として設定されるものです。
相場を大きく超える手数料を請求される場合は、悪徳業者の可能性があるため注意が必要です。
支払いができなくなった場合はどうなる?
2者間ファクタリングでは、利用者が売掛金を回収後、ファクタリング会社に返済を行う必要があります。
しかし、回収した売掛金を他の支払いに充ててしまい、ファクタリング会社への返済が滞った場合、以下のようなリスクが発生します。
初期対応
まず、ファクタリング会社から督促の連絡が入ります。この段階で迅速に対応することで、問題が拡大するのを防ぐことができます。
督促後の措置
督促に応じない場合、次のような措置が取られることがあります:
これにより、売掛先から直接ファクタリング会社に支払いが行われる場合があります。
法的リスク
売掛金を他の用途に流用した場合、横領や詐欺と見なされることがあります。この場合、刑事罰の対象となる可能性があるため、慎重に対応する必要があります。